最近の「カイジ」やニセ「自転車日本一周」逃亡犯って、一種の「社会的鬼ごっこ」かも。
1:最近の「カイジ」の展開が面白い。ギャンブルで24億円一度は手に入れたけど、負けた側は力づくで取り戻そうとする。そこからの必死の逃避行なんだけど、それが「社会におけるリアルな鬼ごっこ」ともいえる内容になっている。
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
この前、自転車日本一周に化けて逃避行した、あの脱走犯とも重なるんだよね pic.twitter.com/KudCxiPNfc
2:はじめは「金もなきゃ車もない、着の身着のままで取調室から脱走した男なんて、3時間で捕まるだろ」と甘く見てた。
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
それが40日だっけ、逃げおおせたのには本当に驚きだった。(もちろん称賛ではない)
そして逮捕されて「実は日本1周の旅行者に化けてた」は「それか!」という一手だった。
3:自分の知人にも、「自転車日本一周」という人が喫茶店に入ってきたらそれだけで大歓待し、仲間を呼んで一晩宴会で歓待、宿泊させてカンパを持たせて送り出した人がいる。昔のお遍路さんじゃないけど、そういうふうにして食いつなげる可能性が比較的高い。決して褒める訳じゃないが「絶妙の一手」。
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
4:話をカイジに戻すと「社会的鬼ごっこ」は、相手がレンタカー利用や銀行預金、ケータイ契約など、嫌でも社会と接点を持たざるを得ない場面を捉えて、そこから捕まえようとすることと、そこから逃れることを示す。カイジを追う帝愛は巨大企業で、半分イリーガルな形でそれを使う設定になってる。
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
5:ほとんどの人間は、そういう形で完全な匿名や透明人間になることができないし、だからトータルに社会は安全なんだろうけど、皆、その一方で、そんな形で社会としがらみが切れないことの煩わしさや怖さも感じているんじゃないかと思う。
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
だからカイジの、この潜伏記にわくわくするんじゃないかな?
6:カイジの潜伏テク、あえて正規の方法で借りたレンタカーを屋内駐車場に放置して、それをダミーとして捜索させるとかは見事だけど、そのあと「世を拗ねたキャンピングカー屋の親父」にめぐりあって、実質買取りのような形でレンタルできる、というのは少々ご都合主義にも見えた。だけど(続く) pic.twitter.com/eBRT85MX7W
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7:近代社会で、社会的痕跡を残さないで活動する時に「反骨」というか何というか…アメリカ南部の保守主義にでもありそうな「政府とか役所とか大企業に反発して、そういう「公」とは距離をおいて協力しない」という独立独歩の主がいると、リアルさはともかくやりやすくなるのも事実なんだろうな。 pic.twitter.com/AO2RGU5AcJ
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8:このキャンピングカー屋は「警察には協力せざるをえない」と最初から言うぐらいだから、もちろんまだまだ常識家、アウトローではないんだけど、帝愛の追手からの質問は無視する、と約束してくれてることで、車のセンからのカイジ追跡は不可能になると。こういう偏屈親父を挟ませて、探偵役の(続) pic.twitter.com/kJlLVLw2Ue
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9:探偵役の追跡を「偏屈親父」の偏屈が妨害する、というのではシャーロック・ホームズの「青いガーネット」事件を思い出します。
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あの時、ホームズは普通に聞いてもこの偏屈親父は証言しないな、と瞬時に判断、逆に質問をその種の親父が食いつく「賭け」の題材にして聞き出す華麗な技を見せたっけ。
10:「ああいう男…見たら、賭けを持ちかければ必ず引っかかる」ホームズは言った。「あえて言うが、もし奴の前に100ポンド積んでいたとしても、賭けを持ちかけるというアイデアで僕が彼から引き出したほど完璧な情報は入手できなかっただろう」https://t.co/Ad4tAIO5dU
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ホームズはぞんざいに言った。「もし君が話さないと言うなら賭けは終わりだ、それだけだ。しかし僕は鳥のことなら、いつでも喜んで賭けをする人間でね。僕は自分が食べた鳥が田舎育ちだという方に五ポンド賭けたんだ」
「そうかそれじゃ、お前は五ポンドすったな。あれは町育ちだ」店員は鋭く言った。
「そんなことはない」
「そうだと言っているんだ」
「信じられん」
「子供の頃からずっと鳥を扱っている俺より鳥に詳しいと思っているのか。いいか、アルファに行った鳥は全部町育ちだ」
「そんなことでは信じられんな」
「それじゃ賭けるか?」
「自分が正しいと分かっているから、単に君から金を巻き上げるだけだがね。しかし偏屈になるべきじゃないという勉強代に一ソブリン賭けよう」
店員は不気味ににやりと笑った。「帳簿を持ってこい、ビル」彼は言った。
少年は小さな薄い冊子と背表紙が物凄く脂ぎった物体を持ってきて、吊るされたランプの下に並べた。
「さあ、それじゃ、ミスター自惚れ」店員は言った。「俺はガチョウは品切れと思ったが、しかし俺が店じまいする前に、うちの店にまだ一羽いたと分かるだろうな。この小さな帳簿が分かるか?」
「ああ?」
「俺が誰から仕入れたかという一覧だ。分かるか?それじゃ、このページにあるのが田舎の連中だ、そして名前の後ろにあるのが、大きな元帳の勘定だ。では、この別のページに赤インクで書いてあるのを見ろ、これは町の供給者の一覧だ。三番目の名前を見ろ。ちょっと俺に読んでみてくれるか」
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「オークショット夫人,ブリクストンロード 117 - 249」ホームズは読み上げた。「その通り。じゃその元帳を引いてみろ」
ホームズは指示にあるページをめくった。「これだ、オークショット夫人、ブリクストンロード 117 卵と鳥の供給者」
「それじゃ最後の記録はどうなっている?」
「12月22日。24羽のガチョウ 七ペンス六シリング」
「そのとおり。そこだ。下になんて書いてある?」
「アルファのウィンディゲート氏に販売 12シリング」
「何か言うことがあるか?」
ホームズは物凄く悔しそうな顔をした。彼はソブリン金貨をポケットから取り出して、台に投げ捨てて、口も聞きたくないほど腹立たしいという様子で背を向けた。何ヤードか離れてホームズは街灯の下に立ち止まり、彼独特の、心の底からおかしそうな雰囲気で声を殺して笑った。
「ああいう風に頬髯をカットしている男で、『ピンク・アン』がポケットから飛び出しているのを見たら、賭けを持ちかければ必ず引っかかる」ホームズは言った。「あえて言うが、もし奴の前に100ポンド積んでいたとしても、賭けを持ちかけるというアイデアで僕が彼から引き出したほど完璧な情報は入手できなかっただろう。さあワトソン、僕の考えでは、調査はもう終わりに近い。(後略)」
11:再開。
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
「社会的鬼ごっこ」と仮題した、免許や健康保険やケータイ契約や住民票…などのトラップをかいくぐり、名無しさんとして社会の闇に溶け込む…というのは、ホントにやるかとは別に、普通の真っ当な社会人にも、何となくのワクワク感があるんじゃないかと思う。だから今のカイジが面白いんだ
11:再開。
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
「社会的鬼ごっこ」と仮題した、免許や健康保険やケータイ契約や住民票…などのトラップをかいくぐり、名無しさんとして社会の闇に溶け込む…というのは、ホントにやるかとは別に、普通の真っ当な社会人にも、何となくのワクワク感があるんじゃないかと思う。だから今のカイジが面白いんだ
12:「蒸発願望」といってもいいのかもしれない。
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
ただ、社会がどんどん効率的で精緻になり、ITやビッグデータが活用されればされるほど、社会的鬼ごっこから完璧に逃れるのは難しくなってると思う。たとえば昭和時代の蒸発より、平成の今の蒸発のほうが絶対難しいんじゃないかと思うんだよな。
13:そういえば、あとで読んでみたいと思いつつ未読なのが20数年前に話題になった「完全失踪マニュアル」だった。サラ金とかDVとか、現実として本気で「社会的鬼ごっこ」…逃げたり、鬼側として追いかける側になることは今も多いだろう。どんなノウハウで今は失踪してんかなhttps://t.co/ZPf9oUPWzJ pic.twitter.com/KgJY0zYeWL
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
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14:
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
最近ってほどでもないけど、逃亡で話題になったのはオウム信者たちだが、住民票を不正に取得する方法は案外にも簡単であった。ただ今は「写真付き証明書が必要になった」というこの一点だけで、ほぼこの手は使えなくなったようだ。いくつかの抜け道はあるようだけど…https://t.co/UcQBINuVWY
15:もしこれから「顔認証」の精度があがり、普及が進んだら、もっと厳しくなるだろう。帝愛グループは顔認証のシステムも活用できるから、カイジたちの逃げるのはもっと難しくなる。
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
自転車の樋田容疑者だって、中国では実用化されてるらしい「警官が顔認証できる機械」持ってたらすぐ逮捕だったかな
16:そんな感じで、どんどん「社会的鬼ごっこ」を逃げ切れる確率は、技術やシステムが精緻になる中で難しくなってる。カイジがそんな社会の中で「偏屈なキャンピングカー屋の親父から現金で車を借りれた」なんてやや無理筋の展開も含めながら、どう逃げる様を描くのか。そういう点で注目してます。(完
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
17:終わったけど補足
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
「社会的鬼ごっこ」が難しくなればなるほど90%以上の一般市民にとっては安全で安心な社会になる、ってのも事実なんだねえ。今回の自転車逃亡の樋田容疑者、中国で実用化してるという「警察が顔認証機械を持ってて、手配犯を一瞬で参照できる」機械あれば高知県で捕まってた。
中国警察が進めるような顔認識を活用した捜査は https://t.co/RAJVTZsMf8 たぶん日本でも、今回のような逃亡中の犯人を追跡時などは絶対に効力を発揮するだろう。だけど絶対にプライバシーの問題も発生する。
— bookroad (@bookroad1) 2018年10月13日
どんなふうに扱われていくのかな